HOME > 法人案内 > これからのみおつくし福祉会 (法人のビジョン)
少子高齢化が急激に進む中で、既存の社会保障・社会福祉制度では国民の生活基盤を支えきれなくなることを見越して、2000年に社会福祉基礎構造改革が実施されました。措置から契約へ、処遇から福祉サービスへ、利用者の権利擁護や、福祉のサービスは利用者が選択することが出来る仕組みへと改革が行われました。すなはち社会福祉の事業が、事業として特別な存在ではなくユーザー(利用者)やコンシューマー(消費者)のニーズ、要請にこたえなければならない事業として提供されることが当たり前とされるようになったのです。
また、制度的にも大きな転換が行われて、社会保障制度の大きな枠組みの一つである介護保険制度の導入や、地域生活支援の考え方を中心に据えた事業、権利擁護のための仕組み、その後の障害者改革への道筋もこの時期を契機に新たな一歩を踏み出し、現在の社会福祉・社会保障制度に繋がる大きな改革が行われました。
同じ時期に、日本の経済構造も大きな岐路に立っていました。右肩上がりの経済成長は1990年代に入りバブルの崩壊とともに終焉します。急激な経済の大幅な落ち込みを迎え、企業の収益の悪化とともに安定的な雇用制度は崩壊をきたし、また同時に目覚ましい新興諸国の台頭は国内の産業の空洞化を招き、多くの路頭に迷えるホームレスの出現を呼び起こすことになりました。その後の失われた10年からさらには20年間ともいわれる経済的混乱混迷と、高齢化社会が進む中で、私たちが目の当たりにしているのは、日本の国家的損失としての様々な経済的混乱と、地方も含めて未曾有の財政赤字、そして超高齢化社会の中で人口減少時代の到来であります。安定的財政基盤と地域社会の存立なしには社会保障制度の確立・維持すら難しいという解決困難な状況を抱えている現実があります。
一方では、社会保障・社会福祉の制度を利用する利用者の意識も存在も大きく変わってきました。そもそも社会福祉の利用者はかつての社会的弱者と言われていた人たちだけではなく、より多くの一般市民にまで脆弱な社会的背景を基にした影響がおよんでいます。年金受給対象にはならない高齢者や、たとえ受け取ってはいても最低限の生活水準を満たせない年金受給者の存在、さらには若年層壮年世代を含む雇用難民、貧富の格差、DV被害や虐待、都市部における大量の(保育所)待機児童の発生、家庭での養育力の低下、離婚率の増加や未婚出産によるシングルマザーの増大、貧困の連鎖の中での子どもの貧困率の増加などに表れています。
そのような状況の中で、新たな社会保障・社会福祉の制度仕組みのあり方が問われています。
特に大きな変化を求められているのは、これまでに培われてきた日本型の社会福祉の現在の仕組みであります。社会福祉事業の担い手である社会福祉法人の存在、役割やその制度、在り方であり、また社会福祉基礎構造改革で示された方向の再確認であります。利用者、消費者(納税者)のニーズに沿った福祉の提供や、施設型の福祉からの脱却、さらには地域の生活を支える仕組み、支えあう地域の担い手をつくり維持する連携の創出に向けた取り組みが求められていると言えましょう。
現在、みおつくし福祉会が運営している事業の中で、約半数を占める入所施設(生活保護施設、母子生活支援施設、児童養護施設、児童心理治療施設)は、一種社会福祉事業の、より利用者の生活に対する影響力、果たさなければならない責任性の重い施設であります。生活困窮・社会的孤立、家族崩壊等の中で生活の糧や居場所を失った人々や子どもたちのために、その生活や命を支え、自らの力で自らが求める人生に向けて、自立(律)の準備をし、力を蓄えていくための場を提供し支援援助をしています。社会的養護を必要とする子どもたちや母子家庭、社会的困窮状況にある人々に最後のセイフティーネットとしての施設での生活を通して新たな社会での豊かな生活、安定した生活、幸福を追求し守っていくため、一人一人の個別の状況に沿った適切必要な支援を実施していくことを目的に、事業を行っています。
◯ 生活保護施設をはじめとして成人の生活する支援施設では、保護の一方で、社会や地域の中で自立した生活、安定的な生活を築くために援助支援をしていくことを基本としています。施設での生活支援だけではなく、可能な限りその後のよりそい見守りも行っています。そもそも施設の利用に当たっても個人としての判断や意向が尊重されます。生活保護や、他の地域での生活支援の制度も選択出来るようになっていく中で、法人としてもそれぞれの施設事業所において、地域や他の支援組織との連携のもと、最初からその支援も視野に入れた取組を実施していくことが求められています。
◯ 社会的養護施設(児童養護施設・児童心理治療施設・母子生活支援施設) は、児童福祉法、児童憲章、児童に関する条約等に謳われているように子どもの権利擁護の拠点であり、「子どもの最善の利益のために」と「すべての子どもを社会全体で育む」を基本理念としています。 みおつくし福祉会は、その理念の下に、一人ひとり子どもが、安心して暮らせる「あたりまえの生活」を保障し、その育みを丁寧にすすめていきます。そして子どもが社会の中で自立し自己実現する力を施設の活動や生活体験を通して培っていきます。 また子どもたちの中には、虐待体験や不適切な養育環境におかれることで、母子生活支援施設においては、母親がDV被害により、情緒や行動、自己認知や対人認知に深いダメージを受けている場合も多く、その回復のため専門的ケアや心理的ケアなどの治療的な支援により信頼関係や自己肯定感を取り戻しせるよう支援します。このような子どもや親の問題状況の解決や緩和をめざし、親と共に、親を支えながら、あるいは親に代わって発達や養育を保障していく包括的な取組を行い、施設退所後も継続的なアフターケアによる支援や見守りなどで、一貫したライフサイクルを見通した支援計画のもと、貧困や虐待などの世代間連鎖を断ち切る支援に努めます。
法人の施設の半数以上を占める保育所は、保育を必要とする子どもをお預かりし、子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期の生活の大半を過ごす場であります。保育所では一人一人を大切にし、一人一人の状況に応じた保育を実施するとともに、何より楽しく生き生きと集団生活を行い安心して生活できる環境づくりに取り組んでいます。また、保護者と共に子どもの成長を喜び合える関係づくりや、必要に応じて保護者の抱えている様々な問題の解決のために相談などの支援を行うなど家庭との連携を大切にしています。さらに、保育所に蓄積されてきた子どものあそび・生活・健康などに関する経験やノウハウを生かし地域の団体や住民と連携して、地域の保護者や子どもたちの支援を行っています。
大阪市から運営受託している公立保育所については、民営化の流れの中で徐々に法人への移管が進められているところです。
さらに「子ども子育て支援新制度」がスタートし、小規模保育や認定こども園の制度など様々な手段が活用できるようになりました。地域の実情、保護者のニーズに基づいた新たな事業の実践を行っていきます。
法人では、こういった施設の運営経営だけではなく、地域での生活支援の事業も行っています。
既設の自立支援施設の運営の経験を活かし、新たな制度としてスタートした、新法「生活困窮者自立支援法」に基づく大阪市・区単位の生活困窮者相談支援事業を、それぞれの区の社会福祉活動協議会と共同体で運営し、既存の法人内事業の機能を活かし、他事業者とのネットワークや地域との結びつきを強めながら、さらなる新しい社会・地域の要請に応えられるよう事業を展開しています。
社会や多様な生活者の要請に応えるために、さらなる事業の展開を計画する一方、現在運営している施設や保育園の現状把握をし、地域や社会からの要請に対しての責務を果たし、応えていけるよう努めます。
社会や地域、(中小)企業の存立基盤がぜい弱となり、先の見えない時代を背景として個人と社会の関係が希薄化している中で、個々人の孤立化傾向が深まっています。
① それぞれの事業の特性を活かし、求められる個々人の状況・社会的要請に応えられるより高い機能を開拓し発展充実させていきます。
② 職員の資質を高め、新たな障害や疾患のある利用者や事情を抱えた利用者に対応できるための人材育成に法人全体で努めます。OJTや法人内研修のより高度な内容への取り組み、個々人の自己啓発に対する支援などを行います。
① それぞれの当事者個々人だけでなくその周辺、家族や地域の相談に応じられる具体的な支援体制を構築します。
② 新たな社会的弱者や困難を抱えて地域の中で孤立している生活困窮者支援にそれぞれの分野、機能を活かしながら地域性に考慮をして取り組んで行きます。
③ 地域の担い手として、あたえられた社会福祉施設としての役割に留まらない、地域に根ざした専門的機能を活かし、地域住民と一体になって地域福祉や地域活動に貢献していきます。
④ 少子化、高齢化、人口減少、ジェンダー、虐待、広範な障害者の生活、雇用・貧困、刑余者問題など、大きな社会の問題・変化に積極的に法人の事業・ひとが役割を果たしていけるよう取り組んでいきます。
① 社会福祉法人としてコンプライアンスとガバナンスの確立を図っています。
② 法人本部体制の機能の安定強化を図っていきます。
③ 各事業所間の連携強化と法人・各事業の運営を支援出来る体制作りをします。
④ 財政基盤の確立を行います。
⑤ ホームページなどで事業や財務の公開をすることにより事業の透明性を高めます。
⑥ 事業の担い手である人材育成に努めます。